大好評連載の「小野澤宏時のオフ・ザ・ボール」ですが、今回はご自身も2児の父親である小野澤宏時氏が、そんな悩める皆様の質問にお答えします。
スポーツ・文化・芸術に取り組むジュニアアスリート達とそれを支える指導者、保護者達。真剣であればあるほど、抱える悩みは尽きないもの。大好評連載の「小野澤宏時のオフ・ザ・ボール」ですが、今回はご自身も2児の父親である小野澤宏時氏が、そんな悩める皆様の質問にお答えします。
Q. 「私の娘は、小学生の頃はいくつかの習い事に通っていて、中学生になってからは部活動に所属していました。ですが物事を続けることが苦手で、どれも長続きせず、途中で辞めてしまいました。本人が「やりたい」という意思を持って始めたものでも、挫折したり人間関係に悩んだりすると辞めてしまいます。本人もそれを気にしてか、毎回「次こそは絶対続ける」と意気込むのですが、やはり続きません。親としては厳しく続けさせるべきなのか、自分が続けたいと思うものに出会えるまで好きにさせてあげるべきなのか、毎回悩んでいます。小野澤さんなら、子供にどんな言葉をかけますか?(保護者)」
どのような習い事を行っているのか詳しくはわかりませんが、この文章からだと「やりたい」から「続ける」に目標がすり替わってしまっているように感じます。
僕も子供たちには、自分自身の興味・関心や意欲といった内発的動機付けによって取り組み続けてもらいたいです。そのために取り組み自体を「褒める」といったことは必要になります。しかし、いろいろな場面で「叱らないで褒めた方がいい」と言われている今の世の中では、子供たちもそのことを知っています。そのため、とりあえず褒めるだけでは対象者(子供たち)もその気にはなってくれないでしょう。
最初はやる気に満ちていた状態でも、外的な報酬を与えられたことで、やりがいが報酬を得るための手段となってしまうことをアンダーマイニング効果(undermining)と呼びます。報酬だけでなく、結果に対しての罰則やインセンティブなどでも同様の効果が起きると言われています。例として、お手伝いをしてくれた子に対し、何度かお小遣いをあげたとします。その結果、お小遣いをもらいたいからお手伝いをする、というように行動に対する目的が代わってしまうことを言います。では、どのような声掛けが効果的なのでしょうか。
コーチングの世界ではエンハンシング効果(enhancing)と呼ばれるものがあり、やる気を高めるといった意味で使われます。有名なマズローの欲求5段解説での「承認欲求」のように、誰でも人から褒められ認められたいと思っています。でも、先ほど書いたようにただ褒めただけでは「私をコントロールしたいだけなのではないか?」と勘繰られる可能性があります。
では、あなただったら何を褒められると嬉しいですか?結果ですか?才能ですか?
僕だったらそこまでの過程や努力を褒めてもらいたいです。それは、対象者のことをいつも気にかけて見ていなければ分からないことで、その過程を共感してくれるような声かけや褒め方は嬉しいですよね。いろいろとチャレンジしてみてください。
<問い合わせ>
Bring Up Rugby Academy
ブリングアップ ラグビーアカデミー静岡校
詳しくはこちらまで!:https://www.bu-as.com/
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第九回 人から必要とされているようであればチャレンジしてみよう
<プロフィール>
小野澤 宏時(おのざわ ひろとき) 静岡県島田市金谷町出身。1978年生まれ。元ラグビー日本代表。静岡聖光学院中等部、高等部、中央大学を経て、トップリーグではサントリーサンゴリアス、キヤノンイーグルスに所属。日本代表キャップ数(出場回数)81は歴代2位。名ウィングとして「うなぎステップ」を武器に代表戦55トライ。現役時代から教育に興味があり教員免許を取得後、筑波大学大学院へ進学、その後日本体育大学の修士課程から博士課程に進み、教育、指導に関する研究に携わる。2018年よりBring Up Rugby Academyコーチ。2019年より、静岡初の女子7人制ラグビーチーム「アザレア・セブン」監督。他、大学講師など多方面で活躍中。