スポーツ・文化・芸術に取り組むジュニアアスリート達とそれを支える指導者、保護者達。真剣であればあるほど、抱える悩みは尽きないもの。大好評連載の「小野澤宏時のオフ・ザ・ボール」ですが、今回はご自身も2児の父親である小野澤宏時氏が、そんな悩める皆様の質問にお答えします。
Q1.「昔はサッカーが強かった学校で古豪と言われる歴史もあります。ですが、ここ何年かは市内大会を突破し県大会までは行けるものの、そこから先に進むことができない状態が続いています。子供達もそこで負けることが当たり前で「自分たちの実力じゃしょうがないよね」とか「どうせ勝てねえよな」と諦めてしまっている様です。
特に強豪校と当たった時などは、試合前からどうやったら失点しないかの気持ちが強くなってしまい、いくらハッパをかけても、勝つことなど考えられない状態になってしまいます。
練習も一生懸命だし、試合も毎週の様にやって、経験も積んでいるのに、負け癖の様なものがついてしまっているのか、チーム全体の気持ちが下がってしまっているようです。上級生のそんな気持ちは下級生にも伝わるのか、それが伝統の様になってしまうのをなんとかしたいと思ってます。
勝つことが全てでは無いし、負けてもいいから思い切ってぶつかって、サッカーを楽しんでくれればいいと思うものの、 見ているとやはり勝った時の喜びを知ってもらいたいとも思ってしまいます。たとえ絶対勝てない相手と対峙した時でも、彼らのモチベーションを上げられるような何か良い方法があればアドバイスいただけないでしょうか。よろしくお願いします。(駆け出しの指導者)」
どうなりたいのかは、本人たちの中にあるものなので、そこを確かめる作業をすることも必要なのではないでしょうか。
少しでも上を狙ってチャレンジしたい指導者から見ると、本人たちが諦めてしまっているように見えているだけで、本人たちにしてみれば、市内大会の突破が目標だった場合、すでに目標が達成されているため、満足してしまっているのかもしれません。
指導者としては目標設定をする段階で、達成可能なゴールではなく、チャレンジしてもらいたいという気持ちも理解できます。しかし、子供たちと大人では経験や知識に差があるため、大人にとって「こうすればいいのに…」と思うことが、子供にはイメージできないことが多々あります。そのため、目標設定をする段階でも、指導者が話し合いの場のファシリテーターとして、環境設定をして、選手との話し合いに参加しながら決めていくのはどうでしょうか。
その際に指導者側が問いかけスキルとして、以下のようなことを整理しておくと、話し合いもスムーズに進むかもしれません。
〈TELL〉であれば、「こうしよう」と指導者が主導して物事を決めていくことになり、〈SELL〉では「こんなことはどうだろ?」と選択肢を与えながらも本人たちに決定を促す方法になります。〈ASK〉として「どのようにしていこう?」とオープンな質問もあれば〈DELEGATE〉のように「任せた!」という方法もあるでしょう。そして「指示してやらせる」だけではなく、本人たちの意思を尊重したいからこそ「本人たちが求めていないからしょうがない」として諦めてしまっては、放任というよりも、放置になってしまいます。
スポーツ活動を行いたくて集まっているのであれば、どこを目標にするかを直接話し合う必要があるのではないでしょうか。そのなかで、指導者側の知識や経験によるゴール達成度や選択肢を〈SELL〉の質問方法として提示し、本人たちの意思決定の後にゴール達成のためのアクションプランに落とし込んでいくのがよいと思います。
<問い合わせ>
Bring Up Rugby Academy
ブリングアップ ラグビーアカデミー静岡校
詳しくはこちらまで!:https://www.bu-as.com/
悩める皆様からの質問を受け付けております。こちらよりご応募ください。
第九回 人から必要とされているようであればチャレンジしてみよう
<プロフィール>
小野澤 宏時(おのざわ ひろとき) 静岡県島田市金谷町出身。1978年生まれ。元ラグビー日本代表。静岡聖光学院中等部、高等部、中央大学を経て、トップリーグではサントリーサンゴリアス、キヤノンイーグルスに所属。日本代表キャップ数(出場回数)81は歴代2位。名ウィングとして「うなぎステップ」を武器に代表戦55トライ。現役時代から教育に興味があり教員免許を取得後、筑波大学大学院へ進学、その後日本体育大学の修士課程から博士課程に進み、教育、指導に関する研究に携わる。2018年よりBring Up Rugby Academyコーチ。2019年より、静岡初の女子7人制ラグビーチーム「アザレア・セブン」監督。他、大学講師など多方面で活躍中。
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