競技開始数年で全国高校総体や国体に出場する選手を輩出する静岡県内唯一の部活動で、「一生の趣味」と出会う。日々の努力が形になるウエイトリフティングで、昨日の自分を超える喜びを。

静岡県立科学技術高等学校
ウエイトリフティング部

現在、静岡県内の高校でウエイトリフティング部があるのは科学技術高校一校のみ。高校から競技を始める部員が占める中、全国高校総体(インターハイ)や国体に出場する選手を輩出する同部の活動や競技の魅力を聞いた。

世界チャンピオンによる指導。目標はインターハイ表彰台。

ウエイトリフティング、いわゆる重量挙げは、オリンピック競技として馴染み深いが、その内容を知る人は少ない。両手でバーベルを頭上まで一気に上げ立ち上がる「スナッチ」、鎖骨の位置まで持ち上げてから頭上に上げる「クリーン&ジャーク」、各3回の試技で各種目最高重量の合計を競うスポーツだ。男女とも体重別で10階級に分かれ、男子は55㎏級から。筋肉隆々で重量感のあるイメージが強いが、部員たちの姿は至って普通だ。「大事なのは技術と柔軟性、脚力と背筋」という同部を指導するスポーツエキスパートの平岡力さんは、世界マスターズの65~69歳89㎏級優勝の現役選手。静岡県ウエイトリフティング協会の理事長でもある。練習は平日3日に加え、月2回日曜午前中に清水区の「J-STEP」で社会人や同部OBらと汗を流す。高校で初めて競技に触れる部員たちは、まず怪我をしないように基本技術と柔軟性を身につけてから競技に挑む。61㎏級の青島琉(3年)は、1年時のトータル重量70㎏から自己ベスト180㎏まで記録を伸ばした。「日々の積み重ね、努力が形になるのが楽しい。一生の趣味を見つけました」と青島。部員たちはまず、インターハイ出場の標準記録を目指し、全国8位までが立てる表彰台を目標に日々努力を重ねている。

廃部の危機を乗り越えて。1年生部員3人がつなぐ歴史。

清水工業高校時代に始まった同部は、2008年再編整備後の科学技術高校になっても活動を続けてきた。1年前、2年生2人だけになった同部は存続が危ぶまれたが、1年生3人が入部し危機を乗り越えた。同部に入りたくて科学技術高校を選んだ小野夏己は「力だけでなく技術が必要。記録が伸びる楽しさがあり、新たな仲間、筋力アップもできた」と入部半年で国体出場を経験。高校総体標準記録にあと7㎏まで迫っている。バスケ部出身の三浦慶大、剣道部出身の藤浪祐真と共にインターハイ出場を目指す。「2人だけだった青島たち3年生が1年生3人にバトンを渡してくれた。これからも県内唯一の部活として存在し続けたい」と顧問2年目の高谷先生。同部を応援するOBや社会人たちからのアドバイスや刺激が、部員たちの成長に与える影響も大きい。後輩を温かく見守る先輩の青島は「3人とも自分が1年の時の記録をすでに超えていて成長が速い。まだまだいける」と太鼓判を押す。高校から競技を始めて、オリンピック選手まで登り詰めるケースもあるのがウエイトリフティングの世界だ。3人揃ってインターハイの表彰台に上がるのも夢ではない。平岡さんのように一旦競技から離れても、年を経て再び世界を目指して頂点に立つ人もいる。まずは競技を楽しんでほしい。「一生の趣味」を手に入れる幸せは何物にも代え難い。


3年
青島 琉(あおしま りゅう)
AOSHIMA Ryu


菊川東中学出身。中学はソフトテニス部。県内の工業高校の中から同校に魅力を感じて進学し、入学後に同部の存在を知り入部。2年生時に全国高校総体61㎏級に初出場。2022年とちぎ国体、少年の部61㎏級全国12位。自己ベストはスナッチ85㎏、ジャーク95㎏。今春卒業後、社会人になっても競技を続ける予定。


1年
小野 夏己(おの なつき)
ONO Natsuki


長田南中学出身。小中学時代はスイミングクラブに所属。中3時に東京五輪で見た同競技に魅せられ、県内唯一の同部に入るため進学。持ち前の脚力を武器に、競技開始半年で国体67㎏級出場。自己ベストはスナッチ75㎏、ジャーク85㎏。目標は2023年国体入賞、3年生で迎える2024年全国高校総体にて3位以上を目指す。


 

 

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