Go For It ! 佐野淳哉選手インタビュー

「高校、大学からでも遅くはない。夢中になれる何かを見つけて欲しい。」

レバンテフジ静岡 佐野 淳哉 選手

 10代の時、自分が自転車競技のプロ選手になるとは夢にも思っていませんでした。小学生の頃はサッカーを遊びでやる程度。特に足も速くなく、運動面では普通より悪い方。キャッチボールもまともにできませんでした(笑)。中学は兄と同じバレー部に入り、背は大きい方でしたが万年補欠。それでも休まず真面目に練習は続けました。一つの事を継続する力はこの時に養われたのかもしれません。
清水南高校ではオーケストラ部に入り、3年間コントラバスを弾いていました。これも自転車とは程遠いですね。通学で毎日片道12~13キロを自転車で走っていましたが、特に面白味を感じることもなく、移動の手段としか考えていませんでした。ただ、周りより少し速かったみたいです。
自転車競技への入口は、浪人時代運動不足解消に買ったトライアスロン用の自転車でした。大学でもオーケストラをと思いましたが、それでは運動しなくなる。いつかはトライアスロンをくらいの軽い気持ちで自転車同好会に入ったんです。一番の契機は、大学1年の夏休みの交通事故です。左膝の靭帯損傷で通常の生活に戻るまで1年半。自転車もまともに乗れませんでした。乗れないと乗りたくなる。怪我の功名ですね。誘われて自転車競技の小さな大会に出始めると、いい成績が出ました。結果が出ると面白い。今まで運動で賞状を貰うことなどなかった私が、褒められる喜びを知ったわけです。大学生になって初めて(笑)。大学3年のインカレでは上位入賞、学生ながら実業団のカテゴリーでチームに所属し、自転車競技に没頭しました。そして卒業と同時にプロ選手に。人生何が起こるかわかりません。自分が夢中になれて、人より少し得意なのが自転車競技だったんです。
私がやっている自転車のロードレースは、チームで挑む競技です。自分を犠牲にしてチームから優勝者を出すこともあります。展開次第で状況は常に変わり、弱い人間が勝つこともある世界です。ある時は敵チームと協力しながら、勝負どころを見極めたり。駆け引きの面白さがあって、どこか人間臭く、競技者の性格や人柄が如実に表れます。一般社会に近いところは、この競技の魅力のひとつです。最もメジャーな大会は「ツール・ド・フランス」ですが、チーム間の駆け引きの妙や選手の性格に注目しながら観ると面白いと思います。
日本での競技認知は、本場ヨーロッパに比べるとまだまだ低いのが現状です。私が3年前に「インザスカイSANO」のアカウントでツイッターを始めたのは、少しでも多くの人に興味を持って欲しかったから。何かアクションを起こさなければ何も変わりません。最近は、アニメ&映画「弱虫ペダル」の影響で、自転車ロードレースに興味を持つ若い世代が増え始めています。自転車には、人力で体感できる他では味わえないスピード、風を切る爽快感があります。性能は自分の脚のみ。そこが魅力です。海外の様に、スポーツ自転車を楽しむ人たちがもっと増えたらと願っています。
私はこれまで国内外のチームで海外遠征や大会など、15年以上競技に関わってきました。38歳のベテラン選手として、自分のノウハウを次世代に伝え、自転車界へ恩返しをする時です。今回、静岡に地域密着型のチーム「レバンテフジ静岡」ができると聞き移籍を決めたのは、恩返しと同時に、自分が生まれ育った土地で自転車競技文化をもっと広めたいと思ったからです。静岡県は地域の特性上、自転車文化が発展する可能性を大いに秘めています。チーム練習は、梅ケ島や日本平などの公道で行っています。同じ場所でプロ選手と競争できるスポーツは他にはありません。挑戦はいつでも受けます。まだ選手として一番でいたいですから、絶対に負けません(笑)。
自転車に出会ったことで私の人生は大きく変わりました。小中学生時代に運動で目立つこともなかった私がプロ選手です。実は自転車選手には球技が苦手な人が多いんです。瞬間の判断力が少ない競技だから私にもできたのだと思います。だから今得意なものがなくても、この先熱くなれる何かに出会えた時、人よりも少し頑張って欲しい。プロにはなれずとも、きっと人生の宝物になるはずです。学生時代は特に色々挑戦できるチャンスです。まずはチャレンジ。そして夢中になれる何かを是非見つけてください。

LEVANTE FUJI SHIZUOKA

佐野 淳哉 選手

1982年生まれ。静岡市清水区出身。興津中学、清水南高を卒業後、埼玉大学へ進み、自転車同好会に入部。自転車競技に目覚め、卒業と同時にプロ選手となる。2014年全日本選手権ロードレース優勝。国内外のチームを経て、2020年レバンテフジ静岡(富士市)に移籍。ツイッター「インザスカイSANO」のフォロワーは8000人を超える。38歳。二児の父。

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