夢を追え! 佐々木 陽平 氏 インタビュー

「自分の人生を主体的に設計できる力を」

静岡聖光学院中学校
ラグビー部監督

佐々木 陽平 氏

ラグビーが好き、学校が好き。
だからこそ、もっと勉強を。

ラグビーを始めたのは高校からです。父親が好きで、テレビではよく見ていましたが、実際にやってみると、体をぶつけたり、走ったり、鍛えたりが楽しくて、すぐに熱中しました。顧問不在でルールもわからず、自分たちで練習メニューを考えて、当時はそれが当たり前でした。毎日同じことが起きない学校という場所も大好きで、それが教師を目指した単純な理由です。今思えば、世の中にはどんな職業があるのかなど将来のことを考えて、もっと勉強しておけば良かったと思います。ラグビーでも、もっと意味のある練習ができたかもしれません。何のためにラグビーに取り組むのかについても考える必要があったと考えています。国際交流の仕事で海外のエリートに触れる機会が多いのですが、彼らは自分の将来像を描き、どんな大学で何を学ぶかまで、自分の言葉でしっかりと伝えます。当時の自分とは雲泥の差です。今の日本の高校生にも同じ事が言え、世界との差が広がっていることに危機感を覚えます。

撮影:武田敏将

選手の主体性が生んだ、
自分の想像を超える勝利。

週3回60~90分の練習時間で2009年に花園初出場を果たした現校長の星野先生からの誘いを受け、私が聖光学院に来たのは38歳の時でした。翌年監督に就任し、2大会連続で決勝戦敗退。細かく分析し、練習内容も全て決めて選手に指示し、絶対に勝てると挑んだ試合でした。その後も、強いのに最後の最後で勝てない。何かを変えなければと、色々な指導者の話を聞きに行き、原因は「監督として花園に立ちたい、私が主役のチーム」だからと気づきました。そこから選手主体に切り替え、選手に任せるようになると、自分たちで色々と考えるようになるんです。短時間練習で成果を上げる全国の部活の話を聞く「部活サミット」を生徒主導で実施するまでになりました。すると接戦に勝てるようになり、花園行きを決め、シード勢並の強豪を破る快挙まで成し遂げたのです。生徒たちは、コーチ陣の問題提起に対して解決策を考え、準備し実践しました。私の想像を遥かに超える勝利です。逞しく成長した姿に本当に感動しました。

大切なのは、スポーツの原理原則を理解した上で、考えてプレーすることです。現場で起きることは予想できません。ビジョンやミッションを持って、このスポーツで何を学べるかを考え、取り組むことが大きな成長につながります。時には助け舟も必要ですが、悩んで自分たちで出した答えでの失敗は、指示待ちよりも必ず将来の役に立ちます。高校生活を振り返った時に、こんなビジョンを描いて、こんな勉強をして、こんなアクションを起こしたというものを持ってほしいと思います。自分の人生を自分で設計する、それがこれからの不確実な時代に求められる力です。


静岡聖光学院中学校 
ラグビー部監督

佐々木 陽平 氏

1977年生まれ。北海道出身。44歳。札幌西高でラグビーを始め、北海道教育大を経て教員に。28歳で念願のラグビー指導者となり、羽幌高時代の2013年に北北海道大会準優勝。2015年、静岡聖光学院に赴任。2016年から監督となり、2018年、19年と2大会連続で花園出場。現在は同学院中学校ラグビー部監督を務める。元U20ラグビー日本代表アナリスト。英語教諭。教務部長兼国際交流部長。

撮影:武田敏将

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