保護者・指導者に考えて欲しい事。

成果を上げるチームワークの作り方

皆さんは「グループ」と「チーム」の違いについて、明確に説明できるでしょうか。今回は「チーム」もしくは「チームワーク」を明確にすることで、その集団の中にある相互の支援関係(=協力関係)について考えていきたいと思います。

では冒頭の質問ですが、「グループ」には共通の目的が存在せず、「チーム」には共通の目的が存在している、が答えです。例えば、目的を共有もしくは理解をしない状態で石を積み上げる仕事をしている集団の場合は「グループ」になり、石を積み上げて城の石垣を作っていると考えている集団の場合は、共通の目的が存在するため「チーム」となります。

「チーム」という言葉は、「tug」(引っ張る)が形を変えて「team」になったと言われています。集団を引っ張る「共通の目的」が存在したときに「グループ」は「チーム」に変化することになります。ここから、結果を出すチームや本当の協力関係が築けているチームには、総じて「共通の目的」が存在し、その上で初めてチームワーク(=協力関係)が機能します。

ただし、共通の目的を持てば、すぐに「チーム」ができるわけではありません。大切なことは、どんな目的(目標)を設定するかということになります。私たちは小さな頃から、「勉強ではできるだけ高い点をとる」、スポーツでは「より高い順位を目指す」など、与えられた目的を達成する競争に慣れています。しかし、集団を引っ張るためには、自分たち自身で最適な目的を設定していくことが重要になります。それでは、次の目的A〜Cにおいて、それぞれの特徴はどのようなものでしょうか。

目的Aは「成果目標」で、チームとして手に入れるべき具体的な成果になります。目的Bは「行動目標」で、チームのメンバーが具体的に取る行動を示したものになります。目的Cは「意義目標」で、最終的に実現すべき状態や姿になります。これらの目的にはメリット・デメリットが存在します。例えば、目的Bはチームのメンバーが、取るべき行動を明確に理解しやすい反面、行動目標のみなので「短いパスを出す」ことが目的となり、作業の奴隷となってしまいます。反面、目的Bの存在しない目的Aの場合、数字や結果の奴隷となります。

これら目的の特徴を理解した上で、チーム全体の特性や現状に応じて、A〜Cの目的を全て作るのか、もしくはどの抽象度で目的を設定するのかを決めなければ、グループをチームに変化させることは難しくなります。

さらに、この共通の目的を前提として、メンバーで相互に支援を行う関係を作る必要があります。チームが自律して目的に向かう状況を作る場合、『人を助けるとはどういうことか』の著者エドガー・H・シャインは、次の4つの問題に関して安心感が得られるような状況を作る必要があると言及しています。

❶ 私はどんな人間になればいいのか。
このチームでの私の役割は何か。
❷ このチームで、私はどれくらいのコントロール、あるいは影響を及ぼすことになるのか。
❸ このチームで私は自分の目標、あるいは要求を果たすことができるのか。
❹ このチームで、人々はどれくらい親しくなるのだろうか。

シャインが挙げた4つの質問に満足に答えるためには、チームメンバーひとりひとりの違いを知る時間が必要になります。そして、それぞれが持っている自分らしさを発揮しながら、お互いが持っている個性を受け入れることができたとき、相互の支援が始まるのです。

文・田中潤
静岡聖光学院中学校・高等学校
校長補佐 経営企画室長

 


<プロフィール>
田中 潤。東京都私立広尾学園中学校高等学校では教科部長・教務統括部長を歴任し、その後当時経営難だった元戸板中学校・戸板女子高等学校の大改革に従事し、共学化に伴い改称した東京都私立三田国際学園中学校・高等学校で若くして教頭と学習進路指導部長を務めた。2021年4月より、静岡聖光学院中学校・高等学校への赴任し、高い偏差値の大学をひたすら目指す「富士山型」ではなく、生徒それぞれが明確な目的を持って、「この大学の研究室で学びたい」と思うような「八ヶ岳型」の進路指導を心がけている。

おすすめの記事

関連記事