創部から40年以上の歴史を持ち、近年ではスプリントの部、ケイリンの部で全国優勝の選手を輩出するなど、自転車競技界から注目される静岡北高自転車競技部。常に全国制覇を目指してきた同部の強さと魅力に迫った。

静岡北高等学校 自転車競技部

日本一を目指す環境と指導者。テーマは「愛される部活」。

真夏の静岡競輪場。プロの競輪選手が真剣勝負をするバンクを、高校生達が必死にペダルを漕ぎ、凄いスピードで走り抜けていく。現在の部員は13名。中等部の2名と共に、多い時は週6日ここで汗を流す。県内に自転車競技部は4校しかなく、他競技に比べ全国が近い。静岡北高自転車競技部のトラックとロードの選手たちが目指すのは常に全国制覇だ。国体のメンバーも多く、「全国レベルの仲間と競い合い、みんなで強くなろうという意識が強いチーム」と鈴木小次廊主将。長きに渡り同部を率いてきた井上総監督の「2位は負け組のトップ。勝ちは1位のみ」の考えがチームに浸透している。2017年から選手を指導する鈴木康平監督は、全日本学生選手権個人追い抜き優勝の実績を持ち、法政大学スポーツ健康学で学んだ体幹トレーニングを中心に、選手の基礎体力を強化してきた。今春卒業した日高裕太(現・日本競輪選手養成所)は、プロ競輪選手の戦術面、練習指導の協力もあり、2年生の時に総体、春の選抜2冠に輝いた(昨年は総体、選抜共に中止)。「日高は競技成績だけでなく、人としても素晴らしかった」という鈴木監督は、「愛される部活」をテーマに普段の生活態度や挨拶を重視。部員たちの挨拶は、とても気持ちの良いものだった。

最高スピードは時速70㎞。高い集中力と瞬発力が鍵。

部員全員が共通で挑むのが1㎞タイムトライアル。全国大会では「コンマ1秒」が勝敗を分ける。メインの練習は「もがき」といって、200mを全力で切り走り、勝利に必要な集中力と瞬発力を高める。高校生でもトップスピードは時速70㎞近い。鈴木監督は、「常に集中するのは難しい。少しの油断が事故につながる」と、オンとオフの切替えを大事にしている。チーム唯一の女子部員、岩辺愛理(3年)は、「時に厳しく、時に楽しく、和気あいあいとしたチーム。きつい練習でも、私も頑張ろうという気持ちになる」と笑い、先生方や親のサポートも大きいという。今夏のインターハイでは、チームスプリントの団体戦と個人種目で全国制覇を目指す同部。ライバルには愛媛県の強豪、松山学院がいる。冬場に鍛えた基礎体力を土台に、もがきで磨いた高い集中力と瞬発力で、時速70㎞超え、コンマ1秒の戦いに挑む。静岡県はオリンピックの自転車競技開催を機に、サイクルスポーツの聖地化を目指している。そして、北高自転車競技部には、練習環境、指導者、互いを高め合う仲間など、日本一を目指す条件が整っている。日高先輩に続き、静岡から日本を代表する選手が誕生する期待に胸が膨らんだ。


キャプテン鈴木 小次廊(すずき こじろう)
Kojiro Suzuki
竜爪中出身。小学5年からロードバイクに乗り始める。中学で競輪選手を目指すと決意し、高いレベルで自分を磨こうと北高へ。今春の選抜は1㎞TT(タイムトライアル)全国8位。主将としてチームを引っ張りインターハイでは個人、団体共に全国優勝を目指す。「コンマ1秒の戦い」を制し、目標の競輪選手へとぶれずに突き進む。


岩辺 愛理(いわなべ あいり)
Airi Iwanabe
静岡北中出身。北高自転車競技部の兄の応援でインターハイに行った時、女子選手が500mTTで新記録を樹立しガッツポーズをする姿を見て、「かっこいい」と中学3年の秋から同部で競技を始める。U17の大会でケイリン準優勝、春の選抜大会ケイリンで全国9位。インターハイでは、500mTTの自己ベスト、37秒台前半を目指す。


 

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