1974年創部。2009年、星野校長が監督の時に全国高校ラグビー大会(通称:花園)初出場。短い練習時間にも関わらず、過去6度の花園出場を果たしたことで、全国的にも有名なチームが目指す姿とは?

静岡聖光学院高等学校 ラグビー部

ラグビーだけに捉われない。思考と決断、対話の質。

聖光学院は、生徒の思考力と人間力の育成を教育の軸に据える中高一貫の男子校だ。文武両道を基本に、部活動は週3日の1時間~1時間半。それはラグビー部も例外ではない。同部の部訓「成し遂げる」は、ラグビーに限らず何事にも前向きに取り組み、成し遂げることを意味する。同部を14年指導し、今年から高等部監督を務める奥村先生は「6年間の聖光ラグビーを通じ、決断する力をつけ、自分の生きる道を見つけてほしい」と、選手たちが色々と挑戦し、失敗しながら、自ら考え答えを出すことを重視する。中高で約100人の部員が練習するグラウンドには、監督やコーチの細かな指示は飛ばない。選手たちは、水飲み休憩時にダッシュで集まり話し合う。中学時から、時間を大切に、自分の意見を伝え、チームの質を向上させる意識が沁みついている。外部コーチには、同校出身で元日本代表の小野澤宏時氏や日本代表ランニングコーチの里大輔氏らが名を連ねるが、常に思考を促すアプローチで、選手の主体性を尊重する。ラグビーは思考と決断、対話の連続。その質の高さが強さの秘密だ。
2018年と2019年には、同部選手の発案により、クラウドファンディングで100万円の資金を集め、全国の短時間で好成績を残している学校を招待し情報共有する「部活サミット」を開催。先生はアドバイスのみで、運営は全て生徒が行った。その時に発案者が掲げた「日本一魅力のあるチームに」は、その後も同部が目指す合言葉となっている。

悔しい敗戦を糧に、攻守とも前に出る聖光ラグビーで勝つ 。

昨年の県予選決勝は、東海大翔洋高に終了間際の1トライ差で敗退。東海ブロック決勝ではあと1点及ばす、100回記念の花園行を逃した。1年生で試合に出場した立山一希(2年)は、「悔しい思いをして、今年と来年の花園は絶対に取るという気持ちになった」と、練習に取り組む意識が変わったという。主将の丸尾瑛 (3年)は「目標は花園でシード校撃破。聖光学院らしい攻守ともに前に出るラグビーで勝ちたい」とチームを引っ張る。新人戦は浜松工業に敗退し3位だった。奥村監督は「今年のチームはモチベーションが高く真面目な子たちが揃っている。6年間勝ち続けるのは難しい。敗戦から学ぶことで、まだまだ成長できる」と巻き返しに期待を寄せる。
入学時にはラグビーの存在すら知らなかったという丸尾主将は「仲間のために体を張るラグビーから多くを学んだ。自分の意見も言えるようになった」と5年間を振り返る。きっと1年後には、充実した6年間だった、見ている人たちに感動を与えるチームだったと胸を張って卒業するだろう。思考力と人間力を磨いてきた彼らからは、そう思わせる何かを感じた。

 


キャプテン丸尾 瑛(まるお えい)
Ei Maruo
藤枝市出身。小学生からサッカーを始め、中学入学時に友達に誘われラグビー部に。練習中も一切手を抜かず、仲間のために体を張る男気のある選手。中学時は口下手だったが精神的に成長し、「荷物の整理、挨拶や態度など、自分たちで規律を高める」と頼りになるリーダー。ポジションはスタンドオフとセンター。


立山一希(たてやま かずき)
Kazuki Tateyama
東京都出身。「どうせなら全国の舞台に立ちたい」と中学からラグビーを始める。恵まれた体格とサッカーで鍛えたキック力が武器。足も速く、ウィング、フルバックなど、スクラムハーフ以外バックス全般をこなす。「今の目標はU17東海トレセンに合格すること」。将来はラグビー選手も視野に、目標は日本代表の中村亮土選手。


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