今夏、福井県で行われた高校総体陸上において、東海大静岡翔洋高長距離駅伝部の兵藤ジュダ(3年)が男 子800mで高校日本一に輝いた。優勝タイムの1分48 秒26は大会新、高校生歴代3位の記録。この快走に は、同部の駅伝に懸ける思いが込められていた。

東海大学付属静岡翔洋高等学校
陸上競技部 長距離駅伝部

やらされる練習はしない。長所伸展と自立が基本。

東海大静岡翔洋高に長距離駅伝部が誕生したのは3年前。2019年に箱根駅伝初優勝を果たした東海大学は、付属高校出身選手の強化を進めていた。それに応えたのが、公立中学の教員を経て同校の副校長に就任した秋岡達郎監督だ。自ら選手寮として7LDKの自宅を購入し、初年の部員は男子4人、女子1人。まさにゼロからのスタートだった。練習はロードが中心。週1回、日本平頂上までを往復し登りと下りを鍛え、朝練では週1~2回、三保の松林を走る。他にも様々な場所を走り、持久力と体力、あらゆる道への対応力を身につける。秋岡監督の指導方針は長所伸展。スピード、登りに強いなど、選手の持つ力を最大限に伸ばすことだ。競技場で行う週2回の練習では、自らの課題を選手が提示し、選手個人が自由に長所を磨く。チーム練習も自分たちで考え、やらされる練習はしない。「言いたくなるのをぐっと我慢しています。自分で課題を見つけ、考え、解決する力が、大学、大人になってから必ず生きてきますから」と秋岡監督。寮生活も同様に、基本は個人管理。食事も自分たちで作る。競技以上に力を入れているのが選手の自立なのだ。特にスカウトはしないが、「駅伝をやりたい」と徐々に部員が増え、男子18名、女子21名の総勢39名となった。その内30人が寮で生活をする。

悔しさをバネに大きく成長。駅伝の借りは、駅伝で返す。

大学駅伝で活躍する選手を育てることに特化した同部は、創部から実績を上げてきた。1年目は都道府県駅伝で男女共に県の代表選手に選出、2年目はインターハイ中止となったが、3年目の今年、全国優勝の選手が誕生した。チームが目指すのは、全国高校駅伝の舞台、京都の都大路だ。女子は、県大会で4位、3位、2位と毎年順位を上げている。男子は昨年優勝を狙える位置にいたが6位に終わった。エース1区を任された当時2年の兵藤が脱水症状でまさかの13位。3年生の巻き返しも及ばなかった。「あの悔しさがあったから今がある」と兵藤選手。練習に対する姿勢と意識が変わり、1日も休むことなくキャプテンとして走りでチームを引っ張るようになった。持ち前のスピードに加え、体力、持久力がアップし、インターハイでは800mの前日に行われた1500mで、トップにわずか3m、歴代3位の3分41秒86と、本番で自己ベストを7秒伸ばし準優勝を遂げた。「思った以上にタイムが出て驚いた」という言葉は、長距離練習の積み上げと自立心の向上がもたらす効果を物語っていた。
11月7日エコパスタジアム。都大路行きを決める駅伝県大会がある。男女共に優勝を狙っている。苦しい練習をみんなでやってきた。一つの襷をみんなでつなぐ、チームでやるんだという意識にこだわってきた。全ては駅伝で勝つために。

 

キャプテン
兵藤 ジュダ

Judah Hyoudo
(ひょうどう じゅだ)
清水飯田中出身。父は米国人、母は日本人。小学1年でサッカーを始め、その天性のスピードから精華清水RCの誘いを受け、4年生から陸上を始める。短距離からスタートし、中学では中距離に。強い先輩たちと一緒に走りたいと、練習環境が整った翔洋を選んだ。800m、1500m高校歴代3位。5000m県ランキング1位。目標とする選手は、駅伝で区間賞や区間新と活躍し、学生時代に1500m日本一に輝いた東海大学OBの館澤亨次選手(現:DeNA)。将来の目標は「東海大学で箱根を走り、1500mや5000mの力を磨き、世界で活躍できる選手になること」。今は「昨年の借りを返し、チームを都大路に導くこと」が一番の目標だ。

 

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