何でもお悩み相談室(4)
スポーツ・文化・芸術に取り組むジュニアアスリート達とそれを支える指導者、保護者達。真剣であればあるほど、抱える悩みは尽きないもの。大好評連載の「小野澤宏時のオフ・ザ・ボール」ですが、今回はご自身も2児の父親である小野澤宏時氏が、そんな悩める皆様の質問にお答えします。
Q1.「中学生の息子は、小さい頃から内気な性格で自分から積極的に話をするようなタイプではありません。学校の先生の話では、本人の個性であり、先生に質問されればきちんと答えるし、友達もいるので問題は特にないとのことです。息子は小さい頃からサッカーをやっているのですが、そのような性格からか、試合中は味方に声を出してアピールすることが少なく、必然的にボールもあまり触れないようです。それでも本人はサッカーが好きで今後も続けたいそうです。息子のような性格の子は、団体スポーツには向いていないのでしょうか? 内気で大人しい子でも団体競技が好きな子もいると思いますが、個人競技の方が向いているのでしょうか? またコーチではなく、親として何かアドバイスできることはありますでしょうか?(保護者)」
まず、本人が「サッカーが好き」と言うのであれば向いているのだと思います。
声を出すことは人との意思疎通として重要な要素です。しかし、声だけが相手とコミュニケーションできる術ではありません。ラグビーと違い360度にパスの選択肢のあるスポーツ(サッカーやバスケット、ハンドボールなど)の場合、アイコンタクトや身振り手振りといった非言語での情報伝達でプレーが成立する場面が多くあります。
情報の伝わり方としては、「メラビアンの法則」なども参考になるかもしれません。
自分の意思を伝えようとするアウトプットの仕方は人によって様々です。コミュニケーションというと言語での情報伝達をイメージしてしまうことがあります。その中には言語(verbal communication)と非言語(non-verbal communication)があることから、最近ではまとめて、対人間スキル(Inter personal skill)と言われることもあります。僕は団体での球技は、対人間スキル、インターパーソナルスキルの精度がパスなどに結果として現れるのだと思っています。
ひとつの提案ですが、「もっと話をしたら?」と背中を押すだけではなく、インターパーソナルスキルの種類について親子で話し合ってみるのはどうでしょうか?言葉だけでなく、手振りや視線などを例に、「こんなことでも伝わるね!」「この伝え方はどんな時に使えるかな?」など発見を促すような声掛けをしながら、親子で一緒に考えることで、頭の中を整理できるかもしれません。
もし、言語での情報伝達を習得したい場合は、ラグビーをさせてみるのも面白いと思います。ラグビーはパスを前に投げられないため、ボールをもらうためには、ボールを持って走っている仲間に後ろから声をかけなければなりません。他のゴール型の球技(サッカーやバスケなど)よりも、言語での情報伝達の比重がかなり高くなります。僕の子供もサッカーをしていますが、ラグビーを経験したことで「味方との関係性が深まる声掛けができるようになった」と言っていました。先生に質問されればきちんと答えるというのであれば、スポーツでも声を出す必要性を強く感じれば、言葉で表現すること、相手に伝えることの大切さに気づくきっかけになるかもしれません。
海外では、複数のスポーツを楽しむことは、ごく自然なことです。そこから新しい発見があったり、自分に合ったスポーツを見つけるチャンスが広がります。専門性を深めるためにマルチスポーツを経験してみるのも面白いと思いますよ。
<問い合わせ>
Bring Up Rugby Academy
ブリングアップ ラグビーアカデミー静岡校
詳しくはこちらまで!:https://www.bu-as.com/
悩める皆様からの質問を受け付けております。こちらよりご応募ください。
<プロフィール>
小野澤 宏時(おのざわ ひろとき) 静岡県島田市金谷町出身。1978年生まれ。元ラグビー日本代表。静岡聖光学院中等部、高等部、中央大学を経て、トップリーグではサントリーサンゴリアス、キヤノンイーグルスに所属。日本代表キャップ数(出場回数)81は歴代2位。名ウィングとして「うなぎステップ」を武器に代表戦55トライ。現役時代から教育に興味があり教員免許を取得後、筑波大学大学院へ進学、その後日本体育大学の修士課程から博士課程に進み、教育、指導に関する研究に携わる。2018年よりBring Up Rugby Academyコーチ。2019年より、静岡初の女子7人制ラグビーチーム「アザレア・セブン」監督。他、大学講師など多方面で活躍中。
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