2年振り14度目の県選手権優勝。試練を乗り越え掴んだ全国切符。

静岡学園高等学校
サッカー部

第102回全国高校サッカー選手権静岡県大会決勝で藤枝東を下し、2年振り14回目の優勝を遂げた静岡学園。前回は準決勝で浜松開誠館に敗れた。その1年後、リベンジを果たしたチームの道のりは、決して容易なものではなかった。

けが人続出の危機も選手が成長。チームが団結、果たしたリベンジ。

新チームのスタート、1年前の新人戦は決勝で浜名に敗れた。結果以上に圧倒された試合内容に、「プレミアリーグの残留争いも覚悟した」という川口監督。それでも冬場に鍛えたチームはプレミアの初戦で躍動すると、エースFW神田奏真を中心に調子を上げていった。不甲斐ないプレーが続いたGK中村圭佑も、監督の叱咤激励を機に勝利の立役者へと成長。無失点の試合が続く中、MF高田優も徐々に得点を上げ、リーグを首位で折り返し、全国総体出場も決めた。しかし、体調不良の監督不在で迎えた総体初戦でまさかの敗退。キャプテンの中村は「先を見過ぎて、目の前の試合にかける思いが弱かった」と悔やんだ。選手の頭は3回戦で戦う予定の青森山田に向いていた。そこからが試練の始まりだった。エース神田が手術で離脱すると、MF福地瑠伊、DF大村海心ら主力にけが人が相次いだ。プレミアは首位から陥落したが、選手層が厚いのが静岡学園。選手権までの2か月間で新しい選手が経験を積み自信をつけると、チーム力が上昇していった。

主力を欠いて挑んだ選手権は、Bチームから昇格した宮嵜隆之介、庄大空が大活躍。準決勝を浜松開誠館に1対0で勝ちリベンジを果たすと、決勝の藤枝東戦では2人が揃って1ゴール1アシスト、まさに救世主となった。「今年の強みは団結力。全員がチームのために戦い体を張れる。誰が出ても勝てるチームになった」と中村。川口監督は「1年間で本当に大きく成長した。主力が戻って来ると更に良くなる」と全国大会で誰を使うか嬉しい悩みを抱える。それでも全国制覇は簡単ではない。4年前の再現を期待したいが、まずは苦難を乗り越え掴んだ栄冠を称えたい。

部員は全国から、総勢200人。今年は3選手がプロの舞台に。

高いテクニックレベルを武器に観客を魅了するチーム作りを目指す同部には、県内はもちろん、全国から多くの生徒が集まる。部員数は3学年で200人近い。トップのAチームからFチーム、1年生チームを合わせた7チームを、監督とコーチを含め8人で指導する。同部出身の現在プロで活躍する選手は、最年長の三浦知良選手をはじめ31人。現役引退した選手も含めると100人近くになる。今年も、神田、中村、高田の3名がプロ入りを決めた。現在は海外でプレーする旗手怜央選手のように大学を経てプロ入りした選手が4人。計7名の静学出身プロが誕生した。それでも「プロは甘くない」と川口監督。高校時代に自分の武器を磨き、大きくした選手たちの努力を称えつつ、「まずはプロで通用する体とメンタルを鍛え、更に武器を磨いて勝負してほしい」とエールを送る。自分の強みを信じてコツコツ努力できる人間は強い。これはサッカー選手だけの話ではない。


GK キャプテン
中村 圭佑(なかむら けいすけ)
NAKAMURA Keisuke

埼玉県出身。東京ヴェルディに内定。FC東京U-15むさしを経て同校へ。中学からGKに転向し、U‐16、17、18で日本代表。結果が出ず苦しい時期を乗り越え、県選手権では好セーブを連発し大会MVPに。強い気持ちを持つ生粋のリーダー。「日本一のGKになってプロに行く」と全国制覇に燃え、将来は日本代表を目指す。


FW 副キャプテン
神田 奏真(かんだ そうま)
KANDA Soma

大阪府出身。川崎フロンターレに内定。3歳からサッカーを始め、「課題のドリブルを磨くのがプロへの近道」と同校に進学し、U‐16、18で日本代表。クロスからの得点を武器に、今季プレミアで12得点と活躍するも両足の手術で長期離脱。幼い頃からの夢を叶え、「今度は自分が憧れられる選手に」と意欲を燃やす。


MF
高田 優(たかだ ゆう)
TAKADA Yu

静岡東中学出身。徳島ヴォルティスに内定。5歳からサッカーを始め、SALFUS oRs、エスパルスSS静岡を経て同校へ。左足のキックを武器に、パス、ドリブルにも長けるオールラウンドプレーヤー。地道に努力するコツコツタイプで、プロ入り後は「見ている人をワクワクさせ、チームを勝利に導く選手になる」という思いを心に秘める。

※この記事は、2023年11月に取材したものです

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