静岡では数少ない「LEGO®︎SERIOUS PLAY®︎メソッドと教材活用の認定ファシリテータ」として、教育関係者だけではなく、様々な分野の方を対象に、自己との対話を中心にしたワークショップを展開中。
「LEGO®︎SERIOUS PLAY®︎ at島田商業高校弓道部(前編)」
今回と次回は、私がワークショップで実践しているLEGO®︎SERIOUS PLAY®︎(以下LSP)の実践の様子をご報告します。このメソッドを使うことで、自分自身の行動や、その行動の裏に潜んでいる自分の考えや感情などをリフクレクションすることができます。
ワークショップの基本的な流れはとても簡単で、ファシリテータがお題を出しますので、そのお題をブロックを使って形にし、それを周囲の人に説明したり、質問されたことに対して答えたりすることで「対話」を行いながら、自分の中での理解を深めていくという方法をとっています。
さて、今回私がお邪魔したのは、静岡県立島田商業高校(通称、島商)の弓道部の高校2年生11名です。
島商の弓道部は全国大会常連校で、何度も全国大会に進んでいるのですが、顧問の先生から見て、自分の思いを伝えられなかったり、考えがあっても言わなかったり、強い人、意見を言う人に流されている、任せてしまっている、そんな雰囲気があるそうです。そのため、チームとしてまとまっていない感じがしているようで、それぞれの思いや目標は違っていてもいいけれど、それを理解したり、尊重したりしながら、目標に向かっていってほしいと願っていると伺いました。
そこで私は、まず、部員一人一人が「理想の部活」というものをどう考えているのかを明らかにし、その上で、他の部員が何を理想としているのか、みんなで共有しようと考えました。例えば「良い部活にしよう!」といっても、「良い部活」とは、人によって認識が様々ですから、「良い部活とは、自分の中ではこのように考えている」というものを部員全員で共有しようと考えたわけです。
弓道部の皆さんも、「理想の部活」をブロックで形づくりながら、またそれを仲間に説明したり、仲間からの質問に答えたりしながら、自分自身の理想の形を確認していきます。そうしたやりとりの中で、自分の中で曖昧になっていたものや上手く言葉で説明できないものが言葉になって現れてきます。例えば参加した部員の方からは『全国優勝するという目標があるのなら、今までの先輩方の技術面のことや行動面のことで学ぶことが多くあると思う。またその伝統を無理矢理するのではなく、自分たちの代ならではの新たなことを入れるのもとても大切』や『島商弓道部の誰か一人でも欠けてしまえば、チームで育んできたもの(思い)がなくなってしまう。例えチーム内ではない、それぞれの両親、関わって来たすべての人の中の〝誰か〟がいなければ、誰からも応援されるチームになれず、全国制覇もできない』といった意見が出てきました。全国優勝というものを目指しながらも、実は他にもっと大切なことがあるのではないかという気付きが、ブロックを使って対話することで生まれてきました。
参加者11名全員の「理想の部活」は、それぞれ全てが正解で、不正解はありません。このそれぞれの理想が集結し、「1つの理想=チームの理想」に繋がっていけば、全員が合意形成できているチーム目標ができるはずです。そこで11名の皆さんの理想を集結させて、1つの共有目標(全員の理想)を創ることとしました。〈次号に続く〉
<プロフィール>
田代 正樹(たしろ まさき) 静岡聖光学院中学校・高等学校副教頭。
静岡では数少ない「LEGO®︎SERIOUS PLAY®︎メソッドと教材活用の認定ファシリテータ」として、教育関係者だけではなく、様々な分野の方を対象に、自己との対話を中心にしたワークショップを展開中。