野球、サッカー、ラグビー、柔道、剣道、陸上など、多くの全国大会出場歴を 誇る運動部が名を連ねる東海大学付属静岡翔洋高校。女子硬式野球部に続き、 今年新たに男女バドミントン部が誕生した。
東海大学付属静岡翔洋高等学校 男女バドミントン部
部員全員が初心者の1年生。若き指導者と共に始まる挑戦。
昨春の入学生が増えた翔洋高校は、新たな部活の受け皿をと、多くの日本人選手が世界で活躍するバドミントンに注目し、創部を決めた。バドミントン部創部が生徒たちに知らされたのは今年の4月。それでも、仮入部には新入学の1年生男女合わせて40名を超える応募があり、男子22名女子11名が翔洋高校バドミントン部の第一期生となった。部員全員が初心者。中学時代はサッカー、野球、テニス部など、中には運動部ではない生徒もいる。まさにゼロからのスタートである。
顧問を務めるのは、同校に着任して2年目の田中大成監督(24歳)。指導歴こそないが、バドミントン歴17年、学生時代に多くの全国大会に出場し、高校生時には東海地区2位の実績を持つ若き指導者だ。部活動は授業の一環という田中先生は「上手くなるのはもちろん、競技を通した人としての成長が一番大事」と、対外試合などで他校から、「翔洋の挨拶や試合に臨む姿勢は一味違うね」と言ってもらえるようなチームを目指している。
創部当初は校内に練習できるコートが無く、屋外で活動。練習内容はもっぱらステップワークと、それに耐えられる足腰の強化だった。「最初にシャトルを打って当てようとする癖がつくと伸びなくなる」からだ。部員たちは地味できつい練習を、週に5日ひたすら重ねてきた。
第一期生初勝利は俺が、私が!ライバルであり高め合う仲間。
10月初旬、初参戦の学校対抗団体戦。メンバーに選ばれた男女各8名は、シャトルに触り始めて2か月足らず、試合形式の練習もほとんどない状態で試合に挑んだ。結果は1ゲームも奪えず初戦敗退。それでも、経験者や2年生を相手に、2桁得点をあげるなど思った以上の健闘を見せた。「実際に打って、これまでの筋トレや走り込みの必要性を実感した」と男子部長の橋本歩夢(2年)。女子部長の仲田美紗姫(2年)は「試合に負けて、勝ちたい気持ちがより強くなった。ミスして後悔する部分もあったが、もっと練習頑張ればできるぞ!という感触も得た」と前を向く。全部員が初心者ながら、練習に積極的に取り組む姿勢が部の強みと両部長。田中先生は選手の主体性を重んじ、細かい部分まで敢えて指導しない。選手同士で「踏込はこれでいい?」「打った後の戻り方は」など話し合いながら、課題を解決していく。
部としての明確な目標はまだない。まずは一試合、自分が満足できる試合をすることだ。それでも、高校時代に初心者が経験者を次々と倒す光景を見てきたという田中先生は、県中部でトップに立つ選手が誕生する可能性を口にした。選手同士は、団体戦メンバーを競うライバルであると同時に、互いを高め合う存在だ。どの選手が、どのペアが、翔洋バドミントン部初となる勝利をあげ、歴史に名を刻むのか。切磋琢磨する仲間がいるから楽しく、頑張れる。そんな雰囲気がコートに漂っていた。
男子部長
橋本 歩夢(はしもと あゆむ)
Ayumu Hashimoto
清水六中サッカー部ではベンチを温めることが多く、試合に出たい思いから、団体戦も個人戦もある新生バドミントン部へ。競技初挑戦ながら、半年間で成長を実感。「礼儀やスポーツマンシップなど、バドミントンを通じた人間形成が3年間の最終目標」と、部長としてチームを引っ張りながら、まずは個人での一勝を目指す。
女子部長
仲田 美紗姫(なかだ みさき)
Ryusei Ariga
中学まではクラシックバレエ。中学でやったバドミントンの授業が楽しく、高校でやりたいと思ったが、大学推薦につながる翔洋高を選択。創部を聞いて即入部を決めた。「やるからには県のトップになって全国大会へ。高い目標ですけど挑戦していきたい」。初代部長として、負けず嫌いが揃ったメンバーと共に高みに挑む。