新静岡駅から徒歩4分。葵区鷹匠にある静岡大成高校のグラウンドは、決して広くない。同校野球部は、外野の守備練習も厳しい環境の中、昨年春季大会で初の県大会進出。そして、新チームも秋季大会で強豪が揃う中部地区予選を突破した。

静岡大成高等学校 野球部

グラウンドで手を抜かない選手たちが、
創部17年目で破った中部地区の壁。

2004年の創部から18年間同部に携わってきた横山力監督は、狭いグラウンドで必死に頑張る選手たちを指導しながら、「勝ちたい。勝たせてあげたい」と思いながら、結果につながらない時期を繰り返してきた。それが、昨年春、初めて県大会に進出。それまでは相手の力に押されて、自分たちから崩れることが多かった。どう戦えば勝てるのか?出した答えは、選手を信じて、どしっと構えることだった。今年卒業する3年生が、監督の信頼に応え、チームの歴史を変えた。続く後輩たちも秋の大会で県大会へと進み、勝ち方を知るチームへと成長した。チームの信条は「グラウンド内で手を抜かない」こと。選手たち自らが、見ている人が気持ちよくなるような声出しや動きを常に心掛けている。その中心となるのがキャプテンの寺尾湧吾(2年)だ。仲間がミスした時にはすぐに声を掛けて、チームを引き締め、横山監督は「寺尾がチームの価値基準を引き上げている」と絶対の信頼を置く。選手主体のチームへと、確実に進化している。

基本に忠実、緻密に高めた形。
守り勝つ野球で県大会初勝利を。

「グラウンドが狭くフリーバッティングができない分、逆に打撃や守備の姿勢を緻密に高めることに集中できる。基本を大事に、選手個々が野球技術を磨いています」と横山監督。目指すスタイルは、昨年同様、守り勝つ野球だ。新人戦は1試合を3点以内に抑え、打撃がかみ合うことで勝利をおさめた。投手は、変化球のキレで勝負する1年生エースの岡本巧輝と制球力の高い寺尾の2枚看板。強肩強打の捕手、大石莉樹(2年)が打たせて取る両投手の長所を引き出し、球を後ろにそらさず、盗塁を許さず、扇の要にどんと構える。大石は、プロ野球の捕手の動画を見ながら研究を重ね、盗塁阻止率を高めていった。サード寺尾とショート佐藤匠(2年)の三遊間は鉄壁。チーム全体でも、エラーの数は試合を重ねる毎に減り、小さなミスから自滅することもなくなった。打撃面では大量得点を上げる破壊力はないが、チャンスに強く、つなぎもできる大石が3番打者として、多くの得点に絡む。選手それぞれが自らの武器を磨き、それが一つになることでチーム力を上げてきた。それでも、新人戦県大会は初戦で浜松商業に敗れた。県で勝つのは、そう簡単な事ではない。まずは、春も県大会出場を果たし、チーム史上初の県大会勝利が今の目標だ。「チームの雰囲気が明るく、野球が楽しく、やりやすい。持っている力以上が出せる」と寺尾キャプテン。夏には高校最後の甲子園を懸けた戦いが待っている。何が起こるかわからないのが野球の面白さだ。今年の夏、静岡大成野球部が台風の目になるかもしれない。


寺尾 湧吾(てらお ゆうご)
Yugo Terao
静岡南中出身。小学2年生から野球を始め、元気のある同校野球部が気に入り進学を決めた。6番サード。バントやサインプレーを得意とし、守備には絶対の自信を持つ。抜群のコントロールで2番手投手も務める。今の課題は打撃力の向上。守って、投げて、打って、主将としてチームを勝利に導く。

 

 

 



大石 莉樹(おおいし りき)
Riki Oishi
焼津港中出身。野球は小学1年生から。2学年上の従兄弟と一緒にプレーしようと静岡大成へ。1年秋からレギュラーの座を掴んだが、打撃では結果を残せず、チームバッティングを磨いた2年生から打の中心に。「自分のミスで負けたくない。守備も打撃も集中して、盗塁阻止率9割が目標」と県大会での一勝に燃える。

 

 

 


 

 

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