も う 一 つ の 高 校 野 球 、 軟 式 野 球 部 の あ る 高 校 は 県 内 に3校。静岡商業は8年前に全国大会出場を果たし た。全国に行けるのは夏の一回、東海で一校のみ。 そこには、昨年まで全国3連覇、今年準優勝の中京学 院中京高(岐阜)が立ちはだかる。
静岡県立静岡商業高等学校 軟式野球部
打ち勝つ野球を貫き3年目。選手たちが考え、作る野球を。
今夏の東海大会準決勝、対桜丘高(愛知)戦。静岡商業は相手を1安打に抑えながらミスで失点。8、9回の一死三塁の好機を生かせず0対1で敗れ、王者中京高の待つ決勝に届かなかった。軟式野球はヒットや長打が出にくく、1点ゲームが多い。小技が攻撃の主となる中、今年で就任3年目の望月嗣久監督は、打ち勝つ野球を貫いてきた。だからこそ、チャンスで打ちきれなかったことを、選手たち自身が一番悔しがった。
新チームは、2年生9人1年生8人の17名。前チームのレギュラーがバッテリーを含め6人残る。攻守の中心はエースで4番の細澤虎白(2年)。最速134㎞のストレートと120㎞台のスライダーが武器だ。秋の県新人戦は4戦全勝だったが、投げたのは1試合のみ、他の3投手も育ってきている。打撃では、左の2番バッター勝治亮太(1年)にも長打がある。
秋の東海大会は2回戦で中京と当たる予定だ。昨秋は決勝で戦い0対6の完敗だった。王者に勝つのは簡単ではない。それでも勝利への期待が膨らむのは、選手たちが自ら考え実践する野球が根付いてきたからだ。新キャプテンの河口陸(2年)は「エンドランの時は配球に合わせて打つコースを変えたり、相手のサインを見て守備を微調整したり、細かい部分までこだわったレベルの高い野球を、自分たちで考え、作っています」と心強い。練習後は選手同士でミーティングし、何を課題にどう取り組むかを重ねてきた。これも望月監督が目指す姿だ。大目標である、野球、部活を通じた人間形成が背景にある。
選手と周りが心をひとつに。勝負所に強い気持ちで挑む。
「みんな真面目で、野球が好きな子たち。まずは野球を楽しむこと。その中で勝利にもこだわりたい」と望月監督。求めるのは「ひたむきに一生懸命、自分を磨くこと」だ。自らもダイエットに挑戦し、5kg減に成功した。今夏の壮行会では前主将が「重たい監督を胴上げできるかわかりませんが、胴上げできるよう頑張ります」と全校生徒の前で話し、選手たちとの心の距離が近づいたことを喜んだ。
細澤選手は、現チームの特徴を「みんなで野球するところ。ベンチのメンバーも監督もマネージャーも、ひとつにまとまっています」と語ってくれた。選手だけでなく、保護者やOBもチームの一員としてサポートしてくれるのも、静商軟式野球部の強み。この秋にはOB会の援助により、選手全員が白いスパイクでプレーできるようになった。夏本番に向けて、暑さ対策もバッチリだ。
1点が勝敗を左右する軟式野球では、チャンスで打てるか、ピンチで抑えられるかが鍵となる。絶対王者を倒すにはメンタル面の強化が課題だ。「威圧感のある中京の打者にも、ビビらずインコースを攻めたい」と細澤選手。来夏、望月チルドレンが勝負所で力を発揮すれば、9年振りの全国が現実となる。
キャプテン
河口 陸(かわぐち りく)
Riku Kawaguchi
静岡市駿河区出身。長田南中で野球を始め、軟式野球で全国を目指そうと静岡商業へ。今夏から人生初となるキャプテンを務める。チャンスで打てなかった東海大会を反省材料にメンタルを強化。3番ショート、弱音を吐かないリーダーとしてチームを引っ張る。「試合を決める選手になりたい」と雪辱に燃える。
エース
細澤 虎白(ほそざわ こはく)
Ryusei Ariga
静岡市葵区出身。小学生時はソフトボール、賎機中学で野球を始めエースに。中学の先輩、前望月主将に誘われ、一緒に全国を目指そうと静岡商業に進学。身長182cm、投手で4番の大黒柱。「他のピッチャーには負けたくない。来夏、決勝で中京を0点に抑えて、全国に行く」のが目標。「ピンチの時こそ強くありたい」と誓う。
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