1995年創部の静岡西高少林寺拳法部。昨夏の全国インターハイには、個人種目で男女合わせて5名が出場、過去には団体で全国上位の実績もある名門校だ。取材を通して見えてきた、少林寺拳法と同部の魅力とは。

静岡県立静岡西高等学校 少林寺拳法部

基本は護身術の日本の武道。精神や体の自己研鑚のために。

少林寺拳法と聞いて、中国の少林拳を想像する人もいるだろうが全くの別物。戦後昭和22年に香川県で誕生した、精神や体の自己研鑚を目的に護身術を基本とする日本の武道である。現顧問の宇佐美智先生が大学生時代に少林寺拳法を学び、その魅力に触れ、高校生に広めようと、赴任した同校で26年前に創部した。多い時は60人を超える部員がいたという。現在の部員は男子5名、女子3名。「ほとんどが初心者なので、最初が大変なんですよ」と宇佐美先生。創始者・宗道臣氏の教えをまとめた「少林寺拳法読本」を生徒に配り、「本当の平和は、正義感と勇気と慈悲心の強い人間を一人でも多く育てる以外にない」といった創始の目的から、修行の心得などを座学で学び、レポート提出することで理解を深める。まずは合掌礼から始まり、立ち方、座り方と教えていく。
他の武道と違い、他校の選手と対戦することはない。単独演武、組演武(2人)、団体演武(6人)で鍛練した演武を披露し、採点により競う。演武の構成は自分たちで組み立てる。組演武では、当て止めなど、実際に闘っているリアル感をいかに表現できるか、技の正確性も重要。組演武で秋山諒太(2年)とインターハイに出場した第27代主将の野﨑日那大(2年)は「ビデオを撮って二人で見ながら、何度も繰り返し練習します。息の合った演武が必要です」と実に生き生きしていた。

上から下へ、教え伝える。人としての成長を実感できる場所

卒業生の多くが今でも道着を持って顔を出し、生徒たちに教えるのが同部の魅力だ。上級生が下級生を指導する形が創部から継続している。「卒業生の、ここでの経験が大人になって生きている、職場で褒められることが多いという声が何よりも嬉しい」という宇佐美先生。単独演武でインターハイに出場した副将の中森伽耶(2年)は、「以前は引っ込み思案で人と話すのも苦手でした。ここに来て、目標ができ、仲間ができ、教えてくれる人もたくさんいる。どんどん身につき、成長し、強くなれた。周りからも『変わったね』とよく言われます」と感謝いっぱいだ。
「性別や年齢関係なく、みんなで学び合い、誰でも護身術を学ぶことができるのが魅力」と野﨑主将。中森副将は「わずかな力でも数倍の効力を発揮する理法に基づく護身術が基本なので、あまり力も必要ない。特に女子にやってほしい」と勧める。2人の目標は全国大会で入賞することだが、それ以上に大切なものを同部から得ていると感じる。真直ぐな目で少林寺拳法の魅力を語る2人の姿が、競技そのものの魅力を一番物語っていた。これからもずっと存続する部であってほしい。


主将
野崎 日那大(のざき ひなた)
Hinata Nozaki
小学生で空手を習い、美和中では卓球部に所属。西高の夏の体験入学で少林寺拳法部を見学して、武道をやりたい気持ちが再燃し同校へ。今夏、組演武で県2位となり、インターハイ出場。「全国の舞台は緊張感に溢れていて、自分がどこまで通用するか、挑戦しがいのある場所」と来夏の全国入賞を目指す。将来の夢は警察官になること。

 

 

 


副将
中森 伽耶(なかもり かや)
Kaya Nakamori
末広中出身。小学2年から少林寺拳法を始め、高校でも続けたいと同校に進学。現在高校生では少ない二段黒帯で、同部唯一の経験者。高校に入ってから、競技に真剣に向き合い、単独演武で全国大会出場。「人として成長できた部分が多い。ここに来て本当に良かった」。
来夏、今年果たせなかった全国入賞を目指す。将来は美容師になるのが夢。

 

 

 


 

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