2007年創部の常葉大学附属橘高女子サッカー部は、全国高校女子サッカー選手権に毎年出場する強豪校。中高一貫を軸に選手の個性を生かす指導で、なでしこリーグ選手も輩出するチームが、今春から新体制で全国制覇を目指す。

常葉大学附属橘高等学校 女子サッカー部

個を磨く半田サッカーを礎に選手主体の考えるサッカーへ。

橘中女子サッカー部創設の2004年から17年間、中高の監督を務めた元サッカー女子日本代表の半田悦子氏が、今年9月に開幕する女子プロサッカー「WEリーグ」チームの監督に就任した。半田氏の後任としてチームを率いるのは、同部の3期生で大学卒業後なでしこリーグでも活躍した後藤亜弥監督。「これまでの個を磨く部分は大事にしながら、自分自身の判断で動ける選手を育てたい」と選手の自主性を重んじるチームづくりを進めている。新体制になってまだ日は浅いが、新キャプテンの望月真妃(3年)は「前よりも頭を使うサッカーに変わってきた。考えて動くのは大変だけど楽しい」と新たな変化を歓迎する。
部員は、3年9人、2年9人、1年11人の29人。ほとんどが中学から一緒にプレーする仲間で、激しいポジション争いをするライバルでもある。後藤監督の「サッカーに学年は関係ない」の言葉通り、チームの中心選手である秦菜々実(3年)でさえ「後輩に上手い選手が多い。スタメンを取られないように日々の努力が必要」と危機感を募らせる。榊原琴乃(2年)のように将来サッカー選手を目指す選手もいれば、そうでない選手もいる。自分の人生を決めるのは自分。自分に何ができるのか、どうしたいのか、サッカーを通じて学ぶ力、考える力を身につけていく。

勝てる、強いチームに。生活面から変えていく。

今年1月、東海地区予選決勝で藤枝順心に3-0で快勝し挑んだ選手権は、初戦で作陽高(岡山県)に1-1の末、PK戦で敗退。作陽高は大会準優勝だった。悔しい、何かを変えなければという選手たち。「勝てる、強いチームを目指し、声出しや生活面から変えていきたい」と望月主将。勝ちきるためには日常生活の改善が必要という秦は「荷物運びをスタメンだからやらない、そういう部分から変えていく」と3年生が引っ張る覚悟だ。後藤監督も、ピッチ外での態度がピッチ上のプレーに表れるという。2年連続5度目の優勝を果たした順心の挨拶や整理整頓は見習うべき部分がある。県内に全国ナンバー1のチームがある以上、そこを倒すことが自ずと目標になる。夏のインターハイは、宿敵に勝たなくては出場できない。榊原は、順心を倒すために橘を選んだ。
目標は選手たちに決めさせるという後藤監督だが、「たぶん全国優勝って言うでしょうけど」と彼女たちの気持ちはわかっているようだ。予想通り、話を聞いた選手3人とも即答で「目標は全国制覇」と返ってきた。勝つためにはどうすればよいか、選手が自ら考え実践し、これまで磨いた一人一人の個性が融合した時に、本当の意味での新橘女子サッカーが誕生する。インターハイ県予選での女王順心との戦いが楽しみだ。


キャプテン望月真妃(もちづき まさき)
Masaki Mochizuki
静岡市出身。小学生時は清水FC所属。2つ上の先輩に誘われて橘へ。高身長を生かしたポストプレーやセットプレーを得意とし、ポジションはMFとFW。心優しく我慢強い、周りを見れる選手。「一人一人の心に寄り添いメンバーを支えるキャプテン」を目指しチームを引っ張る。将来は看護学校の先生になるのが夢。


秦 菜々実(はた ななみ)
Nanami Hata
沼津市出身。小学生時はアスルクラロ沼津所属。6年間同じ仲間でプレーしたい、サッカーも人としても成長したいと橘へ。2年生からレギュラーを勝ち取り、ポジションはディフェンスと中盤をつなぐアンカー。豊富な運動量と広い視野で、攻守の中心となる選手。将来は理学療法士を目指す予定で、サッカーとの両立を悩み中。


榊原琴乃(さかきばら ことの)
Kotono Sakakibara
静岡市出身。小学生時は中田サッカースポーツ少年団所属。1位を倒すところに行きたいと橘へ。ポジションはトップ下。ドリブル突破を得意とし、得点に絡む選手。将来は海外でのプレーも視野に入れ、日本代表入りを目指す。シュート力と周りを生かす判断力を課題にあげ「まだまだ伸びシロばかりです」と今後が楽しみ。


 

おすすめの記事

関連記事