県内有数の進学校でありながら、過去には全国大会に17回出場し優勝6回、元日本代表の内田篤人氏など多くの名選手を輩出してきた清水東高校。1992年インターハイを最後に全国出場のないサッカー名門校が、この夏躍動した。
静岡県立清水東高等学校 サッカー部
サッカーも勉強も頑張りたい。静学を倒して全国に行く。
6月6日エコパスタジアム。高校総体静岡県予選決勝の舞台に清水東イレブンが立っていた。ノーシードから勝ち上がり、藤枝東、橘を倒しての快進撃。相手は4年前の決勝と同じ、静岡学園だ。試合は後半途中まで3‒1とリードしながら、最後に追いつかれPK戦の末惜しくも敗退。29年振りの全国を逃したが、古豪復活を思わせる見事な戦いぶりだった。
清水東はサッカー推薦のない県立高校。土のグラウンドを他の部活と共用し、練習は週4日、19時半完全下校のため自主練の時間も少なく、決して恵まれた環境とは言えない。それでも「サッカー名門校で勉強とサッカーを両立したい」と、遠くは熱海や裾野から多くの選手が通う。100名の部員は、夏を終え3年生34人中22人が卒部し、現在78名。部員の中には、東大、京大など上位大学への進学者が多い理数科の生徒が3人いる。背番号10番のゲームキャプテン佐野健友(3年)もその一人だ。「サッカーも勉強も頑張るには、いかに時間を捻出するか」と休み時間も勉強にあて、「選手権で学園を倒して全国に行く」と闘志を燃やす。「練習に真面目に取り組む意識の高い仲間が清水東の魅力」と、強度の高い練習も歓迎する。
県内で一番真面目なサッカー。それが「清水東らしさ」
チームを率いて5年目の渡邉勝己監督は同サッカー部OB。1993年に全国を逃した時の3年生で、「僕には全国に連れて行く責任があるんです」とチームを作ってきた。「テクニックの静岡学園、パスの藤枝東、パワーの清水桜が丘、スタイルの違うチームがしのぎを削り合うのが静岡サッカーの面白さ」と渡邉監督。清水東らしさを追求し、辿り着いたのが、「ねばれ はしれ 清水東」に象徴される「県内で一番真面目なチーム」だった。土のグラウンド、短い練習時間、勉強の両立と悩み苦しみながらサッカーに真摯に向き合い、誰も期待していない所をギリギリで勝ち進んでいく、それが清水東だと。それがこの夏、形になった。黄金時代を築いた勝澤監督の「学校生活がいい加減な奴はサッカーもダメ」を引き継ぎ、授業中の態度などの情報収集も欠かさない。
指導者はサッカー経験者の教員と非常勤講師の全5名。筑波大大学院卒の先生による映像を使った戦術面の分析も効果を上げ、選手でなく分析をやりたいと入部した生徒もいる。怪我で決勝に出場できず悔しい思いをした主将の五十嵐宥哉(3年)は「この夏で全国を狙えるチームとわかった。選手権では必ずリベンジを」と誓う。チームの主力で精神的支柱の復活は頼もしい限りだ。古豪復活に向け一枚岩となった清水東。全国の舞台で、静岡県で一番真面目なサッカーを是非見たい。
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